産業保健師に関して深く掘り下げて授業をしてくれる学校は少ないです。
そのため、「産業保健師」という仕事は知っていても具体的にどんな能力が求められるかイメージしづらいですよね。
- 産業保健師になりたいが、転職してやっていけるか不安
- 転職後に向けて少しでも対策をしておきたい
- 現職で働く中で、産業保健師に必要なスキルを身に着けたい
産業保健師として転職を成功させるため、このように感じている人も多いと思います。
私は5年前、未経験から産業保健師に転職しました。
正直な話、転職できたことに満足してしまい入職にあたっての事前準備を怠ったため痛い目を見たことも…💦
あらかじめ「産業保健師に必要な能力(スキル)」を知って対策しておけばよかった💦
と入職後に後悔したものです(笑)
でもそんなことは教科書にも載っていないし、授業でも教えてもらえません。
そこで私の5年間の経験から学んだ「産業保健師に必要な能力(スキル)」についてまとめてみました。
転職成功してもそこで終わりじゃない。
新しいスタートが待っています。
この記事の内容はきっと、みなさんがスムーズに仕事になじむ手助けとなるはずです!
産業保健師に必要なのは「知識だけ」?
仕事の合間に産業保健師の勉強してます✨
他にやっておいた方がいいことってありますか?
えらい!
そうですね、知識の他に「産業保健師に必要な能力(スキル)」についても知っておくといいですよ✨
「産業保健師に必要な能力」??
知識ももちろん大切です。
でも、産業保健師にはそれ以外にも「必要な能力」があります。
「適正」といってもいいかもしれません!
適正…
そ、その能力がないと産業保健師には向いていないってことでしょうか?
向いていないとまでは言いませんよ笑
ただ、転職後に「こんなはずじゃなかった!」とならないように知っておいた方が吉です!
聞くのが怖い気もするけど…
お願いしまーす!!
【教科書にない】産業保健師に必要な8つの能力
産業保健師の仕事はキラキラしたイメージを持たれることも多いんですが、実はめちゃめちゃ地味な仕事です!
業務内容も、カウンセリングや保健指導などの専門的な知識を必要とする仕事だけではありません。
看護師として病院で働いているときに看護の仕事に専念できていたのは、医療職以外の方のサポートがあったからだと転職してから実感します。
物品管理や出棟のお手伝いをしてくれていた補助員さん、ありがとう。
書類の手配をしてくれていたクラークさん、ありがとう。
電子カルテのメンテナンスしてくれてたエンジニアさん、ありがとう。
転職してから、そんな気持ちが大きくなるほど産業保健師が陰でこなさなければならない雑務は多いです。
知識がどれだけ豊富でも、雑務をこなせないと産業保健師の仕事は回せないのでは…。
と思うほど、雑務も重要な仕事のひとつ!
雑務かあ…
ちょっと想像つきません!
私が転職して感じた、産業保健師として専門的な業務・雑務どちらもこなすために「必要な能力」をお伝えしますね✨
入職する企業によって仕事内容・環境はさまざまですが、参考事例の一つになればうれしいです!
①コミュニケーション能力
看護師にとって「コミュニケーション能力」はとても重要ですよね。
これは産業保健師にとっても欠かせない能力です!
看護師をしていて、コミュニケーションをとる機会が多いのはどういう人たちですか?
えーと、まずは医療従事者と話すことが多いかな…。
あとは、患者さんとかその家族かなあ。
たまに転院先の病院にサマリー書いたりもするな。
そうですよね。
産業保健師の場合はこんな人たちとコミュニケーションをとることが多いです。
- 医療職者(産業医・保健師)
- 医療職ではない上司
- 一般の従業員
- 地域の医療機関、健診機関
- 医療職ではない関係機関
看護師と似てるけど、ちょっと違いますね!
そうなんです。
中でも大変なのは、「医療職ではない人」とコミュニケーションをとる機会が多いということなんです。
病院では「自分が病気だ」と自覚した人達に対してケアを行いますよね。
産業保健の現場は「企業」です。
あくまで「仕事をしに来ている人たち」が支援対象となります。
会社に健康になりに来ているわけではないので、医療者の介入を拒まれることも💦
その人たちに、時間を割いて医療職者の意見や指導を聞き入れてもらえるかは、医療者のコミュニケーション力にかかっています!
医療職ではない人とのコミュニケーションをとる上で大変なポイントは以下の3つです。
- 健康施策を展開する時、その必要性を理解してもらいにくい
- 医療者介入の必要性を感じていない人が多く、アプローチが難しい
- 説明の際、医療用語をかみ砕いて説明する要約力が必要
②アセスメント力
「アセスメント」
死ぬほど聞いたワードではないですか?
毎日聞いてます笑
看護師の目標は、患者さんのADLやQOLを上げること。
そのために検査データや患者さんの症状・発言をアセスメントし看護計画を立てますよね。
看護計画は受け持ち看護師が主体となって立てると思いますが、その後ろには同じチームの看護師たちのサポートがあるのではないでしょうか?
チームで意見や助言を出し合って、患者さんがよりよい方向に向かうよう関わっていると思います。
はい!心強いです!
産業保健の現場では、圧倒的に医療者の数が少ないです。
場合によっては、現場には産業保健師一人で、嘱託産業医の来社が月に1回のみということも…。
なので、医療者一人あたりの肩にかかる責任も大きくなります。
産業保健師は従業員の健康の保持増進を行い、企業の健康経営を支えなくてはいけません。
そのために必要な、以下3つのポイントを頭に入れておきましょう!
- 健康診断などのデータをアセスメントし、課題を明らかにする
- 必要な課題の根拠を明らかにして、健康施策を展開する必要がある
- 有効な健康施策を展開できるかは、保健師ひとりひとりのアセスメント力にかかっている
③企画・提案力
先ほど「アセスメント力」が重要と書きました。
でも、課題をアセスメントするだけではダメです!
その課題をクリアするために、従業員に向けたイベントを企画・提案しなくてはいけません。
大事なことなので何度も言います。
従業員はあくまでの会社に仕事をしに来ています。
「健康になりに来ている」わけではありません。
そのため、健康施策に関わる産業保健師は「企業にとって裏方の裏方」です。
健康施策に与えられた予算・時間はそれほど多くない場合も…。
例えば、「健康イベントの運営時間」ひとつとってもこんなにパターンが。
- 就業時間内にイベントを実施し、従業員は仕事を抜けて参加する
- 就業時間終了後にイベントを実施し、従業員は残業時間に参加する(残業代あり)
- 就業時間終了後にイベントを実施し、従業員は退社後に参加する(残業代なし)
どのような条件になるかは企業の考え方次第です。
与えられた条件(時間・予算・場所)によってイベントの運営のしやすさが変わります。
そっか…
ただ自由に企画すればいいわけじゃないんだ。
いずれの実施条件の場合でも、従業員は「わざわざ時間を作って健康イベントに参加する」ことになります。
以下のポイントに注意して企画・提案しましょう!
- 「時間を作ってでも参加したい」と思わせる内容にする
- ターゲット層の選定をしっかりする
- 一般従業員が興味をもち、かつ分かりやすい内容にする
④公平な立場を維持
産業保健師は立場上、非常にセンシティブな個人情報を扱うことになります。
例えば…
- 健康診断の個人結果
- 長時間勤務の状況
- ストレスチェックの内容
- 抱えている疾患名
- 疾患の治療状況
- メンタル相談の有無、内容
- ハラスメントに関する相談状況
項目を見るだけでも非常にデリケートな情報であることが分かると思います。
中には、これらの情報を雑談と見せかけて聞き出そうとしてくる人もいるんです…
えっ!こわ!!
「誰とも仲良くなってはいけない」とまでは言いません。
しかし自分を守るためにも、以下のポイントに注意して人間関係を築いた方が無難です。
- 誰にも肩入れしない
- 常に中立の立場でいる
- 仕事で知りえた情報を公私混同しないよう、線引きして接する
- 守秘義務を守る
- 「企業と従業員」どちらかの一方的な味方にならない
⑤PCスキル
保健師にはPCスキルが絶対必要です!
看護師の仕事上、「電子カルテで文字が打てる」程度のPCスキルの人が多いのではないでしょうか?
(私はそうでした💦)
看護師から産業保健師に転職した場合、同じ医療職でも分野違いの初心者です。
しかし、雇った企業側からするとそんなことは知らないし、関係ありません。
入職したら…
国家資格を持っている産業保健のプロなので、即戦力に違いない!
と、謎の認定をされることがあります。
それは困る~。
いくら免許があっても転職したばかりじゃ何もできないよ…。
即戦力と認定されている上に、一般の従業員と比べるとどうしてもPCスキルは劣ります。
そのため事務作業のスピードも遅く、「こんなことも知らないの?」と思われることも多数。
私はほとんどPCスキル対策をすることなく入職してしまい、こんなことで困りました。
- PCを使って仕事と言われても、何をどうすればいいか分からない
- PCでいったい何ができるのか分からない
- 「何が分からないかが分からない」ので仕事にならない
分からないことだらけです(笑)
そんな私の経験上、PCスキルに対してのアドバイスは以下の3つです。
- ExcelやPowerPointなどのofficeソフトは使いこなせなくても触り慣れておく
- 自分が参考にしやすいと思うテキストを1冊は準備しておく(初心者向けのもので可)
- 分からないことはその都度ネットや本で調べる
- 人に聞きながら作業を進める
目の前の課題をひとつひとつクリアして、PCスキルを習得していきましょう!
⑥整理整頓する力
なっちゃん、整理整頓はできますか?
整理整頓ですか…。
正直あまり得意じゃないかもです。
実は、無関係に思えるかもしれませんが「整理整頓」は産業保健師にとって結構重要なんです。
「整理整頓」が重要な理由は、以下のような理由からです。
- 健診結果などの過去資料が紙媒体で大量に残っていることがある
- 健康診断の種類によっては、個人結果を何十年も保管する必要がある
- 電子データは「ルールに沿ったフォルダ分け」をしないとすぐに探せない
- 労基署の抜き打ち調査などで、急に資料提出を求められることがある
- 医療物品などの備品を管理できるのは医療職だけ
整理整頓って地味に大切なんですね。
そうなんです。
しかも整理整頓ができないと、困るのは自分だけではないんです。
資料や備品が整理整頓されていないと、こんな迷惑をかけることも…
- 同僚の保健師がいた場合、資料が整理整頓されていないと情報共有がしづらい
- 自分が退職した後、後任の保健師が資料を探せずに困る
- 労基署の監査などが入った場合、必要な資料がきちんと保管されていないと会社としての責任問題になりかねない
- 労災の申請のため、従業員の健康管理情報の提供を求められることもある。万が一紛失していた場合管理責任が問われる
「整理整頓」と聞くと軽く考えてしまうかもしれませんが、産業保健師の義務と思っておいた方が良いくらい重要な仕事です。
⑦文章力
産業保健師は文章を打つ機会が多いです。
例えば…
- 健康診断のお知らせなどの社内公文書
- 社内宛メール
- 社外宛メール
- 健康施策の資料作成
これらはビジネス文書で打たないといけません。
ひえ~、ビジネス文書の書き方分からない…。
私も、今でもひどいもんです。
ブログの文書を読むとお察しいただけるかと…笑
文書を作成する場合は、以下に注意しましょう!
- 専門的な内容は、一般従業員に伝わるようにかみ砕いた説明をする
- 内容が間違って伝わらないように、医療職ではない人に一度確認してもらう
- 社内メールといえども、丁寧な言葉遣いが求められる
⑧ビジネスマナー
産業保健師は医療者でありながら、企業に雇われるサラリーマン。
企業の名前に傷をつけないように、最低限のビジネスマナーが必要です。
一般的な「ビジネスマナー」は次のようなものです。
- 丁寧な言葉遣い
- TPOに合った身だしなみ
- 名刺交換
- 電話・メールの応対
- 来客対応
- 訪問先での態度
- 時間や締め切りを守る
- 掃除やコピー用紙補充などの雑務も率先して行う
など
ビジネスマナーがなっていないと、職場や社外の人に不愉快な印象をもたれかねません。
一度不愉快な印象を持たれてしまうと、その後の関係に支障をきたすことも。
「医療職だから」と斜に構えず、一から社会人としてやり直すくらいの気持ちでビジネスマナーを学んでいきましょう!
がんばりまーす!
まとめ:必要な能力を知っておくと、入職してから少し楽になる
いかがでしたか?
本日は教科書には載っていない「産業保健師に必要な能力(スキル)」についてお話しました!
あらかじめ知っておくと、転職後の「こんなの聞いてない!」「こんなの保健師の仕事じゃない!」という気持ちが少し和らぎ、産業保健師という仕事になじみやすいです。
アセスメントは必要だと思ってたんですけど、本当にサラリーマン的な能力がいっぱいで少し驚きました!
産業保健師はサラリーマン!
その気持ちを忘れずに働いていきましょうね♪
- 非医療職者に対するコミュニケーション能力
- 企業にとって有効な健康施策を展開するためのアセスメント力
- 従業員に「参加したい」と思わせる施策を企画・提案する力
- すべてにおいて公平な立場を維持
- ある程度のPCスキル
- 資料や備品を整理整頓し管理する力
- 文章能力
- 社会人として最低限のビジネスマナー