看護業界のマイナー職種である「産業保健師」は出回っている情報が少ないです。
- 周りに「産業保健師について」話を聞ける人がいない
- 転職サイトでは、産業保健師のキラキラした日常だけが取り上げられている
- 産業保健師という仕事は、本当に魅力的な仕事なのか分からない
こんな風に感じている方も多いのではないでしょうか?
どんな仕事にも、必ずマイナス面はあります。それは実際にその職業に就いた人にしか分からないことです。
私は看護師を経て、未経験から産業保健師に転職し現在4年目の現役産業保健師です。
そんな私が、これから産業保健師を目指す方に向けて本音の情報提供をします。
この記事を読むと、実際に働いてからでないと分からない産業保健師の「魅力(プラス面)」と「大変なこと(マイナス面)」について詳しく知ることができます。
あらかじめマイナス面の情報を知っておくと、転職後に感じるギャップが少なくなり良い転職につながります。
産業保健師への転職を成功させ、長期的にキャリアを継続させるために、この記事を読んで産業保健師の仕事の実際について把握しておきましょう!
産業保健師は本当に「メリットばかりの素敵な仕事」?
産業保健師って夜勤もないし、福利厚生も充実してるイメージを持ちました!
でも、本当に良いことばかりなのかな?
転職サイトを見ても産業保健師のリアルな姿がイメージしづらくって…。
たしかに産業保健師はキラキラした面だけが取り上げられがちですよね。
でも、どんな仕事にも「大変なこと」がありますよ!
今回は、実際に転職して感じた産業保健師の「魅力」と「大変なこと」について本音でお話しますね!
産業保健師の「魅力(プラス面)」
会社の「健康経営」に携われる
「健康経営」という言葉を聞いたことはありますか?
従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。
産業保健職は、企業が健康経営を行う上で重要となる「従業員の健康管理」を担っています。
どんなに大きな会社でも、働く人の健康管理をおろそかにしては生き残っていけません。
従業員の健康管理をサポートすることで、結果的に会社の利益に貢献しているというやりがいを感じることができます。
自分の裁量で仕事を進められる
従業員の健康管理のために、産業保健職は次のような業務を行っています。
- 各種健康診断の計画・実施・事後措置
- ストレスチェックの実施
- 各種保健指導の実施
- 健康イベントの企画・運営
- 長時間労働者への対応
- メンタルヘルスケア
産業保健師はひとつの事業所に1名配置であることが多いです。
健康経営に関わる施策の内容について自分で1から考え、PDCAサイクルを回していきます。
ちなみにPDCAサイクルとは…
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
この4つを繰り返し行い、継続的な業務の改善を行うことを言います。
従業員の健康情報をアセスメントし、それをもとに考えた施策の結果がそのまま表れるので自分の仕事としての実感が得られやすいです。
支援対象と継続して関われる
結局私の看護で役に立てたのかな?
患者さんの精神的な支えになれたかな?
看護師をしているとこんな風に悩むことも多いのではないでしょうか。
病院では退院や転院により、支援対象(患者さん)がどんどん入れ替わります。
自分の関わりが最終的にどういう結果になったか見届けられないことも多いですよね。
産業保健師の場合、支援対象(従業員)を長期的にサポートします。
長いケースだと入職から定年まで見届けるケースもあるんです。
そのため自分の関わりによって相手がどう変化したか、経年的にフィードバックが得られやすく仕事へのモチベーションがアップします。
年齢を重ねても働きやすい
産業保健師の仕事はこんな特徴があります。
- 夜勤がない
- デスクワークがほとんどで身体的負担が少ない
- 組織内での異動がない
看護師をしている女性の場合、妊娠・出産・育児などのライフイベントが起こった時に夜勤業務がかなり負担になってしまいます。
そのためライフイベントをきっかけに病院を退職する方も多いですよね。
先ほどあげた特徴から分かるように、産業保健師の仕事は身体的負担が少ないです。
ライフイベントが起きても仕事を継続しやすいことは大きな魅力ですよね。
ビジネスマナーの勉強になる
私は産業保健師になる前、大学病院で勤務していました。
そんな私が転職して一番驚いたことは…
「看護師の常識は、一般社会の常識とは全く違う」
ということです。
社内宛メールひとつとっても、今まで知らなかったルール・マナーがあることを知りました。
良い意味でも悪い意味でも、看護師の世界は特殊で狭い世界だと実感しました。
『井の中の蛙大海を知らず』です。
一般の企業では医療職者以外の方とお話する機会や、社外の方との関わりも多くビジネスマナーの勉強になっています。
看護以外の世界を知ったことで、医療職以外の道に進みたいと思った時に選べる選択肢が広がりました。
大企業の福利厚生を受けられる
看護師の仕事は、夜勤がなければ給与がガクンと下がってしまうのが辛いですよね。
日勤だけの場合、なんとひと月に10万円も下がってしまうこともあるんです💦
夜勤が辛くて転職を考える看護師も多いですが、日勤だけの職場となると年収も100万円前後下がってしまう…。
給与面の問題で、転職を諦めるパターンも多いです。
産業保健師を配置している企業は、一般的に「大企業」と呼ばれるクラスがほとんど。
そのため基本給や賞与などの給与水準が高めです。
私の場合、勤務していたのが地方病院で給与水準が低かったこともあり、基本給だけ見ると…
と「産業保健師の基本給>看護師の基本給(夜勤なし)」になりました。
日勤だけの仕事になることで生活が厳しくなることを恐れていましたが、思いのほか産業保健師の基本給が高かったのは非常にありがたかったです。
ボーナスの支給額は「基本給×〇ヶ月分」と、基本給の額を基準に計算されます。
基本給が高いと、ボーナスの支給額に大きな差が出るのもポイントです。
大企業は福利厚生も手厚くその点もありがたいですね。
前残業や委員会業務がない
「情報収集のための前残業」
「勤務時間外の委員会活動」
これらは病院勤務をする看護師の宿命ですよね。
1時間も早く出勤して情報収集をしたり、休みの日に病棟に来て委員会活動をしているのになぜか残業代が出ないことも多いです。
仕事をしているのに理不尽ですよね。
私はとても苦痛に感じてました。
産業保健師に転職してからは、これらの業務は一切なくなりました!
朝の出勤も始業ギリギリで大丈夫なため、プライベートの時間を多くとれてありがたいです。
産業保健師の「大変なこと(マイナス面)」
医療職がほとんどいないため、業務負担と責任が重い
産業保健師は、自分の裁量で仕事を進められるのが魅力です。
それは見方を変えると、自分にかかる業務負担と責任が重いということ。
とくに「一人職場」の場合は他に産業保健師がいないため、自分だけで業務を回すしかありません。
ただ目の前の仕事をひたすらこなすだけでは業務が回りません。
- マルチタスクに仕事をこなす
- 優先順位をつけて仕事をする
- 業務のやり方を見直す
- 不要な業務がないか振り返る
- 業務自体の効率化を図る
このように工夫しなければ潰れかねません。
マルチタスクや、優先順位をつけて仕事をする上では看護師をしていた時の経験が活かせる場面も多く、「病院に勤めていて良かったな」と実感します。
社内に同業者がいないため孤独感がある
病院にはたくさんの看護師仲間がいました。
困ったことがあればすぐに同僚や上司に相談できた環境はとても恵まれていたと今になって思います。
産業保健師は社内に同業者がいないことがほとんど。
当然同じ立場で相談しあえる相手も少ない(もしくはいない)です。
正確にいえば、同じ医療職として産業医は必ず配置されています。
しかしそれが非常勤産業医だった場合、タイムリーな相談はできません。
同じ目線で相談や愚痴を言い合う仲間がいないのは、思ったよりも孤独です。
教育体制が整っていない
新卒看護師として病院に入職したら、教育係の先輩がマニュアルに沿って1年間指導をしてくれたと思います。
産業保健師の職場では、そのような教育体制が整っていることはほとんどないです。
産業保健師の教育体制が整っていないのは、次のような理由があると感じています。
- 一人職場がほとんどなのでマニュアルを作る習慣がない
- マニュアルを作る時間・マンパワーがない
- そもそも教育係となる先輩保健師がいない
- 専門職として即戦力を期待されているので、「教育する」という概念がない
看護師の世界の教育は厳しく何度も心が折れかけましたが、今になると「なんてありがたかったんだろう」と思います。
産業保健師は「自分で勉強して、育つ」という気持ちがなくては厳しい世界だと知りました。
支援の必要性を理解してもらいにくい
産業保健師の支援対象は「企業で働く従業員」。
そのため、支援対象の多くがおおむね健康な人です。
一見健康に見える方でも、特定保健指導の対象となる場合があります。
その場合、本人は
自分は何の問題もなく働けているので、健康だ
と自己評価している場合が多く、医療職者の介入を極端に嫌う方もいます。
こういったケースでは支援の必要性を理解してもらうまでにとても時間がかかるため、根気強く働きかける必要があります。
自分の仕事の成果がすぐに出ないことが多い
先ほど産業保健師の魅力として「支援対象と継続的に関われること」とお伝えしました。
これは裏を返せば「支援に終わりがない」ということです。
従業員に対して「運動を促すキャンペーン」を計画・実施しても、1年後に組織の肥満度が大きく改善することはほとんどありません。
運動習慣が従業員たちに定着し、それぞれが継続することで初めて組織の肥満度改善につながるのです。
これには数年の月日が必要です。
産業保健師の仕事はこの例のように「長期的支援」となるため、思ったように結果が出ないこともあります。
やる気を失わないように、自分のモチベーションをコントロールする力も必要です。
まとめ:プラス面もマイナス面も受け入れて産業保健師に
いかがでしたか?
本日は私が実際に産業保健師として働いたからこそ知った、産業保健師のプラス面・マイナス面について本音でお話しました。
正直「思ってたよりも大変そう」と感じた人もいるのではないでしょうか?
しかし、どんな仕事にもプラス面・マイナス面は存在します。
私は転職する前、産業保健師のキラキラした面にばかり目を向けていました。
マイナス面に関しての情報収集を積極的にしなかったので
思ってたよりも大変💦
看護師とは違う種類の大変さがある…
とギャップに苦しんだこともたくさんあります。
せっかく転職するために頑張っているんだから、失敗や後悔はしてほしくない。
そんな気持ちから今日はこのお話をすることにしました。
「転職成功だ!」といえるよう、じっくりと情報収集をしましょう!
このBlogが少しでも役に立てるよう、私もがんばります✨
- 産業保健師は、転職サイトで見るようなキラキラしただけの世界ではない
- 入職後にギャップで苦しまないよう、あえて転職前からマイナス面の情報収集を
- プラス面・マイナス面を理解した上での転職は必ず成功する