産業保健師の業務内容は本当に幅広い!
- 転職に向けて産業保健師の勉強を始めたい
- 範囲が広すぎて、何を勉強したらいいか分からない
- 忙しすぎて勉強する時間が少ない
このような状況で悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
私は看護師5年目の時に、半ば勢いで産業保健師を目指して転職活動を始めました。
そのときはただひたすら
なんでもいいから産業保健師になるんだ!!
と思うばかりで、現役産業保健師となった今思い返すとポイントを絞った勉強ができていなかったと反省です💦
私の反省を踏まえ、この記事では入職前から勉強しておくと良い「産業保健師が得ておくべき知識」についてポイントを絞ってお伝えします!
- 現職(看護師)が忙しいので、効率よく勉強したい
- 転職前から最低限の知識は知っておきたい
- 範囲が広すぎて、何から勉強すれば良いか分からない
こんな人はぜひ読んでみてください✨
現職と転職活動の両立は、ただでさえハード!
全てを網羅するのは時間的に厳しいです。
ポイントを絞って、効率よく産業保健師に必要な知識を学びませんか?
産業保健師に必要な知識
どんな仕事も「知識」は必要不可欠です。
ただ、産業保健師についての授業って詳細に覚えていますか?
私は全く覚えていませんでした!
産業保健に関する授業は数コマしかなかったし、国家試験でも出題範囲が少ないのであまり記憶に残っていません💦
そんな状態から自分で勉強を始めようとすると、もう何から手をつけて良いか分からなくなりますよね。
まずは「産業保健師が関わる業務内容」をおさらいしましょう!
産業保健師が関わる業務
産業保健師になると、こんな仕事に携わります。
- 健康診断(一般健康診断・特殊健康診断)
- ストレスチェック
- メンタルヘルス対応
- 特定保健指導
- その他の保健指導
- 過重労働(長時間労働)への対策
- 職場巡視
- 安全衛生委員会への出席
- 健康増進に関する情報発信
- 従業員の急病・怪我への対応
大まかな分類分けですが、それでも結構多いですよね。
産業保健師の業務はたいてい法律(労働安全衛生法)で決められています。
法律で決められているといっても、蓋を開けてみれば企業によってやり方が大きく変わる業務も…。
入職前にがんばって勉強したのに、いざ業務についたらあまり役に立たなかったなんてこともあります。
入職前は「やり方・基準が明確化されているもの」にポイントを絞って勉強しておきましょう!
入職前から勉強しておくといいこと
やり方・基準が明確化されている業務は主に以下の3つです。
- 健康診断
- ストレスチェック
- 特定保健指導
この3つは産業保健師がメインで関わる業務です。
入職前から知識を蓄えておくと実際に業務についたとき少し楽になるので、勉強しておいて損はしません!
厚生労働省がマニュアルを作成してくれていたりするので、比較的勉強が進めやすい点でもオススメです。
手元に参考資料があるというだけでも安心!
【参考資料あり】まずはこれだけ知っておこう!
勉強を始めるには、まずその業務の概要を知ることが大切です!
そこで①健康診断 ②ストレスチェック ③特定保健指導 について簡単に説明します✨
実務に使える参考資料やマニュアルも載せておきますので、ぜひご活用ください!
健康診断について
産業保健師にとって最も重要なのが「健康診断」です。
事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。
また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければいけません。
引用:厚生労働省
ここから分かるように、「健康診断」は企業・従業員双方に義務づけられています。
企 業⇒従業員に健康診断を受けさせる義務
従業員⇒会社の指示に従い、健康診断を受ける義務
産業保健師は、従業員に対して法定通りの健康診断を実施できるようコーディネートする役割があります。
受け漏らしがあると法律違反になりかねませんので責任重大です💦
健康診断は大きく分けて「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類です。
- 雇い入れ時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
「一般健康診断」はどのような企業・職種でも実施基準が同じなので、就職前から勉強がしやすいです。
- 屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者
- 鉛業務に常時従事する労働者
- 四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者
- 特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者
- 高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者
- 放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者
- 除染等業務に常時従事する除染等業務従事者
- 石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者
特殊健康診断を受診する基準ポイント
- 従業員をどのような業務に従事させているか
- 作業内容・環境はどのようなものか
- 使用している化学物質は何か
「特殊健康診断」は種類が多い上に、条件が複雑です。
入職前から完璧に理解するのはむずかしい💦
個人的には「特殊健康診断」は入職後、実際に作業内容を確認してから勉強することをオススメします!
健康診断の事後措置について
健康診断を実施した後、事業者は労働安全衛生法第66条の4に基づき「事後措置」を行う必要があります。
「事後措置」とは…
所見があると診断された労働者について、就業上の措置について、3か月以内に医師または歯科医師の意見を聞かなければなりません。
適切に意見を聴くために、必要に応じ、意見を聴く医師に対し、労働者に係わる作業環境、労働時間、労働密度、深夜業の回数及び時間数、作業態様、作業負荷の状況、過去の健康診断の結果等に関する情報及び職場巡視の機会を提供し、また、健康診断の結果のみでは労働者の身体的又は精神的状態を判断するための情報が十分でない場合は、労働者との面接の機会を提供することが適当です。
引用:厚生労働省
これを読むと「事後措置」は産業医の仕事だと思いますよね。
厳密にいうと、「就業判定が必要な事後措置」は産業医が行います。
しかし全員が就業判定を必要とするわけではありません。
就業上の制限が必要ではない場合であっても、健康状態の悪化を防ぐために医療職者の介入が必要なことがあります。
そんなときは産業保健師の出番です✨
医療職者の介入が必要となった対象者に対して、産業保健師は以下のような生活指導を行います。
- 栄養指導
- 運動指導
- 飲酒に関する指導
- 禁煙指導
- 病院への受診勧奨
【参考資料】健康診断
- 一般健康診断について
(出典:厚生労働省) - 労働安全衛生法に基づく定期健康診断関係資料
(出典:厚生労働省) - 職場のあんぜんサイト
(厚生労働省)
ストレスチェックについて
みなさんも職場で「ストレスチェック」を受けたことがあるのではないでしょうか
ストレスチェックは2015年に「労働安全衛生法」が改正され、労働者が50人以上いる事業所に対して実施が義務付けられました。
ストレスチェックを実施する人のことを「ストレスチェック実施者」と呼びます。
ストレスチェック実施者は、産業保健や精神保健の知識が必要です。
そのため、医師・保健師・厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。(外部委託も可能)
産業保健師はストレスチェック実施者に選出されることが多いため、制度に関する理解を深めておきましょう!
ストレスチェックの目的は…
- 労働者が自分自身のストレス状態を知る
- 対処行動につなげることで「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止する
ストレスチェック実施後、以下のような対処行動を会社側・従業員が取得できるよう働きかけるのも産業保健師の大切な役割です。
ストレスチェック後に期待される
対処行動
- 従業員自身がストレスをためすぎないように対処できる
- ストレスが高い場合は、医師の面接を受けて助言を受ける
- 会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらう
- 職場環境の改善につなげる
【参考資料】ストレスチェック
- ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
(厚生労働省) - 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
(出典:厚生労働省) - ストレスチェック制度関係Q&A
(出典:厚生労働省)
特定保健指導
保健師のメイン業務として「保健指導」が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか?
保健指導は、医療職者が対象者に対して生活習慣に関する改善の助言を行うことです。
生活習慣病などの病気の予防や健康維持・増進を目的としています。
ここでお話するのは、数ある保健指導のうちのひとつである「特定保健指導」についてです。
特定保健指導は…
- 「高齢者の医療の確保に関する法律」で実施が定められている
- 生活習慣病(メタボリックシンドローム)のリスクが高い人に対し行われる保健指導
- 定期健康診断の際に受けた生活習慣病予防健診(特定健診)をもとにハイリスク者を選定する
特定保健指導の目的は…
生活習慣病(メタボリックシンドローム)予備群の人を生活習慣病に移行させないことです。
特定保健指導の対象者となる人は、あくまでもハイリスク者。
まだ医療機関にかかっていない人が多いです。
中には医療職者の介入を極端に嫌う人も…。
関わり方を間違えてしまうと、生活習慣の改善につながらないどころか保健指導の場にすら来てもえないこともあります。
そうならないため、産業保健師は以下のことを意識して対象者に対する指導を行います。
特定保健指導のポイント
- 対象者自身が健診結果を理解できるよう支援する
- 対象者に自らの生活習慣を振り返る機会を設ける
- 生活習慣を改善するための行動目標を一緒に設定する
- 行動目標を実践・継続できるよう支援する
- 指導を通して、自分の体の変化に気がつく
- 対象者が自分の健康に関してセルフケアできるよう支援する
医療者の独りよがりな指導にならないように注意が必要です!
【参考資料】特定保健指導
- 特定健診・特定保健指導について
(厚生労働省) - 特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き
(出典:厚生労働省)
おまけ:産業保健師の仕事につかえる参考資料リスト
業務名 | 参考資料・リンク |
---|---|
一般健康診断 | 一般健康診断について (出典:厚生労働省) 労働安全衛生法に基づく定期健康診断関係資料 (出典:厚生労働省) |
特殊健康診断 | 職場のあんぜんサイト (厚生労働省) |
ストレスチェック | ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等 (厚生労働省) 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル (出典:厚生労働省) ストレスチェック制度関係Q&A (出典:厚生労働省) |
特定保健指導 | 特定健診・特定保健指導について (厚生労働省) 特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き (出典:厚生労働省) |
メンタルヘルス対応 | 労働者の心の健康の保持増進のための指針について (厚生労働省) こころの耳 (厚生労働省) |
過重労働への対策 | 長時間労働削減に向けた取組 (厚生労働省) 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン (厚生労働省) |
まとめ:少しずつ勉強すれば大丈夫!最初は資料集めから
いかがでしたか?
産業保健師は業務内容が幅広く、何から手をつけて良いか分からず不安になる人もいると思います。
最初からすべて完璧なんて絶対無理!!
産業保健師として実務についてから積極的に学んでいってもいいと思います✨
入職前は「やり方・基準が明確化されているもの」にポイントを絞る方が勉強しやすいです。
具体的にはこちらの3つです。
- 健康診断
- ストレスチェック
- 特定保健指導
完璧に理解できなくて不安になるかもしれませんが、困ったときに活用できる参考資料やマニュアルの場所を知っておくだけでも入職後にずいぶん楽になります。
看護師と同じで、産業保健師も日々勉強の世界です。
一歩ずつ知識を深めていきましょう✨
知識の他に、「産業保健師に必要なスキル」について知りたい人はコチラもご覧ください✨